やまねごはん@バークレー+南インド+京都


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おすそわけ熱、ふたたび

日本に住んでいた頃、わたしはおすそわけに尋常ならざる情熱を注いでいたのだ、とこの間思い至った。おすそ分けをしよう、と思いついたり、準備をしているときがいちばん興奮していたかもしれない。父が職場から採ってきてくれた段ボール3つ分のすばらしくおいしい枇杷、夫の焼いた粉もの、質素な夕食のおかず、それから保存食をたくさん作ったとき。連絡もせずに、突然ピンポーンと尋ねるのが常だった。運が良ければそのひとの顔を見ることができて、玄関先でほんのすこしだけおしゃべりする。不在の場合でも、帰ってきたときに玄関先に紙袋が置いてあったら「なんだろう?」と不思議におもってくれるだろう、と想像するとうれしかった。
日本からはなれて知り合いも少なく(その人が喜んでくれるとも限らない、ことに非日本人の場合は!)、子どもも2人にふえて時間も余裕もなくなって、おすそ分けに割くエネルギーが少なくなってなんだか元気もなくなってきて、「ああ、おすそ分けは私のエネルギー源だったのだなあ」と気づいた次第。
子どもの通う学校でインターナショナルポットラック、という持ち寄りイベントがあるというので午前中いっぱいつかってさくら餅を65個つくった。おすそ分けしたい顔がつぎつぎと思い浮かび、こんなこともあろうかととっておいたいちご用容器につめて、「日本の伝統的なお菓子です。中には小豆のペーストがはいってます」とメモをつける。仕上がったものを並べて眺めて悦に入る。あちらこちらに散っていったさくら餅。7家族に届ければ、きっとひと家族くらいはよろこんでくれるだろう、とおもう。


| 日々のこと | posted by やまねごはん |
作物交換の会

いま、一週間で一番楽しみにしているのが作物交換会(Local Food Swapping)で、自家菜園でとれた野菜や果物を持ち寄って、交換する会。私の住んでいるアルバニーという町では火曜日の6時半から開かれる。開かれる場所までは、子どもの手を引いて歩いてゆくと片道たっぷり30分かかる。一度目は7時すぎに到着したらだれもいなかった。2度目は開始時間から15分おくれだったが、ほとんどのものがなくなっていて、「ぴったりにこないとだめよ」とアドバイスされた。3度目はしっかりと早めについた。わたしはサラダリーフの摘んだのをばけついっぱい持参。トマト、いんげん、生の唐辛子、サボテンの実(どうやってたべるんだろう)、レモン、それから黒いちぢくにたくさんのりんご、クインスという古代(?)りんご、ストロベリーツリーフルーツという謎の果物、それからパイナップルグアヴァなど、見場がいまひとつだからこそなおいっそうおいしそうに見えるいきいきとした魅力的な作物がずらりと並ぶ。参加したいけれど畑も果樹もない人は、スプラウト(豆を発芽させたもの。こちらでは健康志向の人に人気)をビニール袋にふたつかみほど、庭の花を10本、あるいはミミズコンポストの土などを持って来たりしていて、なるほど、と思わせられる。野菜はもちろんのこと、果物は特別にうれしい。誰かの家の木からとれた果物は、一番貴重でおいしいから。わが菜園の見慣れた地味な野菜が魔法のように他のものになる、それは参加した誰にとってもおなじこと。
日が暮れつつある、濃紺にむかうグラデーションの空のもと、うすらさみしい気持ちでばけつ片手に帰る夜道。あたたかい我が家に戻ってほっとするのもまたうれしい。




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しずかな夜に

こどもが寝静まったあと、台所が片付いていたならちょっとした保存食を作りたくなる。保存食づくりは瞑想に近い、すなわち、自分にもどる時間。
春にいただいたちいさな大葉の一株が、見事に大きくなった。穂紫蘇がついてきたのでそろそろおしまい。この一株があったおかげでどれほど私たちの食卓に香りが添えられただろう。長い間ありがとう、とおもいながらまだほどよくやわらかな葉を50枚ほどむしる。それから硬くなりすぎていない穂紫蘇も。大葉はジェノベーゼ(けっこうおいしい)にしようと思ったけれど、夜の静けさにブレンダーの響きは強すぎる。ちょうど煮沸消毒した瓶がいくつかあったから、水気をしっかりふきとって醤油とごま油、、にんにくと唐辛子のスライスを2枚。上からすこし押さえてなじませる。醤油の量は少なめに。浸透圧で大葉から出てくる水分をあてにして全体になじむくらいがちょうどいい。ごま油はふと思いついて入れてみたら、醤油の塩分を中和させて、こくと深みがでた。ほんの少しのにんにくもぐっと味をよくする。半日ほどおいたら、海苔でごはんを巻くようにして、大葉でご飯をくるりと包んで食べる。大葉の香りが十全に生きる食べ方だとおもう。
穂紫蘇は塩漬けが一般的かもしれないが、一粒づつ軸からはずして醤油とにんにく、唐辛子に漬けこむ。醤油は大めに、ごま油は入れない。のり巻きの具にいいんじゃないかと思う。
興が乗ってきたので、もうひと瓶。にんにくと唐辛子の残ったのを薄切りに、それを玄米酢に漬ける。使用方法はまだ思いつかない。そうしてできあがった3つの瓶を冷蔵庫におさめた。しずかな夜の幸福な時間。



大葉、にんにく、生唐辛子、醤油、ごま油



にんにく、生唐辛子、玄米酢


| ごはん | posted by やまねごはん |
プルーンタルト

以前サンフランシスコのY子さんが遊びに来てくれたときにもってきてくれたのが、コーンミールベースのピザ台。りんごを薄切りにしてオイルと少しの塩、シナモンでざっとあえてピザ台に乗せて15分焼けば、あっというまにおいしいりんごタルトのできあがり!このピザ台がおいしくて、探し求めていたのだがなかなか見つからない。なかばあきらめかけていたところ、ホールフーズというオーガニック系スーパーで発見!よろこび勇んで買ってきた。
先のりんごタルトはもちろん、ピザにしてももちろんおいしい(そもそもピザ用)。ファーマーズマーケットで完熟のプラムをみかけて、「これはタルトにいけるかも」と思って試してみたら、準備時間10分とは思えぬ味の豪華デザートが出来上がり、家族で大いに盛り上がる。あつあつよりも、ほんの少しさめたくらいが味が馴染んでおいしい(が子どもは待てずに焼き立てをせがむ)。次はいちぢくや洋梨でためしてみよう、なにしろ魔法のように簡単なのだから!



| ごはん | posted by やまねごはん |
チーズタルト

畑ともだちのデニスに「スペインから来たマリアっていう人がいるんだけど、日本が大好きなんだって。こんどうちでゆっくり話をしましょうよ」とさそわれて遊びに行った。スイス、スペインそして日本。お互いの文化に興味があるから質問は尽きない。食事の時間のこと(スペインでは夜ご飯は10時半から食べるの?)、外国語習得について、政治のこと(難しくてついてゆけなかった)。
デニスはチーズタルトを作ってくれた。タルト台にグリュイエールチーズ、卵、牛乳、そしてクリームを混ぜたものを流し込んで、こんがりおいしい焼き目がついている。マリアは「スペインでは食後は必ず果物なのよ!」と、美しいフルーツマリネを持参。苺と葡萄と松の実がアマレットの香りでまとめられている。私は野菜味噌、糠漬けの千切り、畑でとれた香菜、と家にあるものでつくったのりまきを持っていった。糠漬けって?と聞かれて、「エエト、発酵させたピクルスで...(絶句)」横から日本通のマリアが「ピクルスって言ってもね、日本はすごくたくさん種類があって、たいてい発酵させたものだけど、とにかく説明するのはむずかしいのよ」と助け舟を出してくれる。チーズタルトをお土産にもらって帰るとチーズに目のない息子桂は大喜び!


| 日々のこと | posted by やまねごはん |
注目のふたり
かねてから注目しているふたりの対談を読んで、今までなんとなく感じていたことが腑に落ちた。キーワードは「身体感度」。言語化が難しいことをかくも平易に、より多くに伝わるようにやってのける、その知性!かっこいいよなあ。

 内田樹×春日武彦対談

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関心の的

ここのところ「便利な世界がおわっても、幸せに生きられる方法」を考え続けている。たとえば、電気、ガス、水道が止まったら。ものが流通しなくなったら。電気製品でお世話になっているのは、冷蔵庫、洗濯機。明かりはろうそくでどうにかなりそう。そもそも昼間は明るいのだから。冷蔵庫はできるだけ「冷やさなくてもOKな食品保存庫」にしていっている。つまり、常温保存OKなものをふやしてゆく、ということ。いま、冷蔵庫に入っているのは、ほとんどが味噌、醤油などの調味料、粉、ナッツにドライフルーツ。白崎裕子さんのレシピの「みそスープのもと」や自家製「野菜味噌」、ちょうどよく漬かったぬか漬け、ときどき切干大根やひじきの煮たものも。ぬか床は常温で維持できるのがありがたい。毎日2回かき混ぜる。生きた、漬物製造機。先人の知恵だ、とおもう。

洗濯機を使うのをやめて2ヶ月以上がたつ。洗濯板を使って手洗いすると、すごくきれいになる。太陽に干すと気持ちがいい。今は洗濯を2日に1回していて、脱水だけお世話になっている。エネルギーはできるだけ大事につかいたいけれど、脱水はほんとうに大変。かつて、洗濯が重労働だった、ということがよくわかる。よくわかるとなんだか安心する。洗濯は大変だけど、好きなだけ洗えること、水がふんだんに使えるのはありがたい。

水道が止まったら。これが一番こまるとおもう。ここには川も、井戸もない。この間はシンクがつまって1日使えなかったけれど、それだけで洗い物も野菜を洗うことも、さっと手を洗うこともが出来なくて往生した(水は出るのに流せない)。水は飲料用、料理用はもちろんのこと、それと同じくらいにに衛生のために大事。洗濯、掃除、お風呂。トイレがつかえなくなったら困るな。自分で循環可能なトイレを作るにはどうしたらいいのだろう、と考えている。万が一、のときのために、折りたたみ式の水入れ容器を買った。一ヶ月に一度水を交換すればいい。引越しのときは折りたたんで持ってゆける。

ガスが止まったら。料理に火は欠かせない。我が家はとりあえずお湯が沸かせてお米が炊けさえすればわりあいハッピーにご飯が食べられると思う。もともとアウトドアにはうといから、火をおこしたりそれで料理をするのはハードルが高い。だれか伝授してくれないかなあ、とおもいつづけている。さしあたって、アウトドア用のお店で、いざというときはガソリンも燃料として使えて弱火もできる(ご飯を炊くには重要ポイント)火の機械(なんていうんでしょう、これ。バーナー?)を買った。着火前にポンプを押したりして、なんだか本格的な感じ。説明書に「ほんとうに正しく使わないと死ぬこともあります」と書いてあって、怖くて試せずにいる。その他に太陽熱を漬かってお湯を沸かせるキットも。天気の良い日に試してみたい。

食材は、普段食べないようなものを非常食として保管しておくと、結局無駄にしてしまいそうなので、普段使うものを多めにストックして、順番につかってゆくことにする。大事なのは、お米と調味料。野菜は小さな畑から。日本の乾物はすごいなあ、とおもう。ひじきや切干大根を大事に料理して、3日くらいかけていただく。どういうわけだか普段の食事は考えられないくらい質素になってきた。ごはん、野菜味噌、糠漬けを食べ続け、青菜の炒めやお味噌汁があれば豪華、そんな感じ。でも不思議とあきない。

掃除は基本、拭き掃除だけど、お国柄かほとんどの部屋がじゅうたん。掃除機をつかわないでじゅうたんの部屋を掃除するにはどうすればいいんだろう?

使い捨てのものはなるべく減らしてゆきたい。こどものおむつはなるべく布で。5歳の息子桂がまだ夜2回もおねしょをするので、量も多いので紙おむつをつかっていたが、それを毎朝捨てるのがひどく心苦しかった。とりあえず試してみよう、とおもってここ数日布おむつにしている。2枚重ねるので一晩に2回替えると4枚。1歳の翠の分とあわせて多い日は一日15枚程度になる。これもいっときのこと、と思うことにして、余計なことを考えず(だけれど時々うんざりしながら)もくもくと洗い続ける。精神的、肉体的にもきついときにはバランスが大事、無理は禁物、と思いながらありがたく紙おむつを使わせてもらう。

もうひとつ。豆乳ヨーグルトを作りたくてはじめた米のとぎ汁乳酸菌。これを拡大培養してお風呂にじゃんじゃんいれると、温泉のようになる。なぜかお湯が冷めない、冷めているのかもしれないけれどいつまでもあたたかい。ちょっと表現できないくらい気持ちがいい。乳酸菌は、拭き掃除のときにも、おしめを洗うときにもつかう。においが分解されてゆくのがわかる。

いずれも手間ひまかかることばかりで、これに子どもの世話を加えると一日が飛ぶように過ぎてゆくが、これはきっと、あたりまえのことなのだとおもう。あたりまえ、に戻る道はうれしいし、心強い。願わくば水の沸く場所で、もう少し大きな小さな畑と田んぼと果樹とともに過ごせたら、そう妄想している。




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